なぜクラウドファンディングを利用するのか?
クラウドファンディングを利用する中小企業や個人事業主の目的は何でしょうか?
もし、資金調達だけが目的であれば、信用保証協会を利用した借入や自治体の制度融資を使った方が、遥かに低金利かつ長期の資金調達ができます。
また、銀行や信用金庫などの金融機関からプロパー借入(保証協会などの保証がついていない)も可能かもしれません。
クラウドファンディングに取り組みのは主に2つの理由です。
①資金調達以外の目的がある
②保証協会やプロパー借入では資金調達できない
なお、支援者向けはこちらの記事をご参照
資金調達以外の目的
資金調達以外の目的は以下のようなものが挙げられます。
特に「購入型」や「ファンド投資型」のクラウドファンディングが当てはまります。
クラウドファンディングって資金調達が目的じゃないの?
それはクラファンの形態にもよります。
貸付型はまさにそうですが、購入型は様々な目的があります。
主な目的は以下の6つです。
- テストマーケティング
- ファン(顧客)作り
- プロモーション
- 販路開拓
- 生の声
- 信用力の向上
1.テストマーケティング
新商品を開発したとしても、それが本当に消費者のニーズにマッチしており、売れるかどうかはわかりません。特に既に市場に出回っている商品や自社商品のマイナーチェンジであれば、大きく売上予想を外すことはないかもしれませんが、まだ新商品はなかなか需要が読みづらいところです。
特に中小企業や個人事情主にとって、量産して失敗して場合の経済的損失は、経営の致命傷になりかねません。
「購入型」を利用すれば、量産前の”試作品”を掲載することで、潜在的な消費者(=支援者)の有無を確認することができます。「購入型」の支援者は新しい商品やサービスに興味を持っているイノベーターやアーリーアダプターが多いと思われますので、新商品をテストするには絶好の場とも言えます。
〇イノベーター理論
新しい商品やサービスの市場浸透に関する理論。新しい商品やサービスへの反応について、早い順に5つに分類しています。
購入型の支援者は1.2.が多いと考えられます。
1.イノベーター(Innovators:革新者) シェア2.5%
2.アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者) シェア13.5%
3.アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者) シェア34%
4.レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者) シェア34%
5.ラガード(Laggards:遅滞者) シェア16%
但し、2.アーリーアダプターと3.アーリーマジョリティの間には、キャズム(深い溝)があります。
クラウドファンディングの成功で油断することなく、キャズムを超えてこそ新規事業として成功します。
また、「購入型」のプラットフォーマーに支払う手数料は、基本的に「成功報酬」となっていますので、失敗したとしても手数料はかかりません。何度でもチャレンジできます。
2.ファン(顧客)作り
新商品やサービスなど、その企業の事業に興味を持ってくれた支援者は、そのプロジェクトを応援し、ファン(顧客)になってもらえます。最初に興味をもってくれたファンは、その新商品やサービスがシリーズ化したり、多店舗展開した場合、今後も追加購入するリピーターになってくれます。
また、その商品・サービスだけでなく、本件をきっかけにその企業の既存商品・サービスに興味を持ってくれるかもしれません。
そういった意味で、コアなファンを作るといった観点でも重要です。
コアなファン(顧客)はツイッターなどのSNSでも拡散してくれますので、さらに新たなファンを呼び込めます。
3.プロモーション
中小企業や個人事業主にとって、新商品の開発やサービス提供に精一杯で、プロモーションにまでお金と人的リソースを張ることは困難であることが多いです。
低コストで自社のHPやSNSを使ったとしても、プロモーション効果はあまりないのが実情でしょう。
クラウドファンディングでは多くの支援者が集まるプラットフォームで自社の新商品を披露することができるため、アピールする場としては非常に有力です。
また、掲載した新商品・サービスをクラウドファンディング事業者や支援者などが、更にSNS等で紹介してくれることもあり、自社のみでプロモーションを行うよりも多くの潜在顧客にリーチできる可能性があります。
4.販路開拓
新商品・サービスの開発者にとって一番難しいことは、その商品を販売する販路を開拓することではないでしょうか。特にその企業が通常扱う商品と別であれば、いつもの販売先とは異なる先を見つける必要があります。
クラウドファンディングの内、特に「購入型」のプラットフォームは、実は多くのバイヤーがチェックしています。
誰よりも早く独占的に売れる新商品を探しているバイヤーにとっては、まだ世に出ていない新商品が掲載されるクラウドファンディングのプラットフォームは有効な情報の場なのです。
バイヤーが「売れる」と判断すれば、直接事業者に声がかかり、小売店舗やECサイトでの取り扱いが始まることもあります。
東急ハンズやロフトとからも声がかかるかもね。
5.生の声
プロジェクトを始めると、支援者とコンタクトを取れるようになります。
より良い商品を届けるために意見を求めれば、ファンである支援者は積極的に意見をくれるでしょう。
時には厳しい意見もあるかもしれませんが、試作品段階で生の声を聞けるのは非常に貴重であり、より良い商品に仕上げていくためには必要なことだと思います。
これが実は重要。
マーケティングの基本は対象とするお客さまのペインポイントを確り把握することです。
クラウドファンディング実施前にも行っていると思いますが、生の声を早期に聞くことによって、正しい方向に軌道修正できます。
6.信用力の向上
金融機関にとって、新商品開発のための借入を求められても、世に出ていない新商品が売れるかどうか審査判断はなかなか難しく、判断がつきません。
また、小売店舗やECサイトにとっても同様にその新商品が売れるかどうかわからず、取り扱いに躊躇することも多々あります。
しかしながら、クラウドファンディングでその商品のニーズがあることを疎明できれば、商品の信頼性だけでなく、当然商品が売れることによる企業業績の向上に繋がり、対外的な信用力もUPします。
つまり、信用力を向上させることによって、
〇金融機関の融資が通りやすくなる
〇小売店やECサイトで取り扱ってもらえる
銀行員として申し訳ないところです。
以下で、もう少し詳しく融資の話をします。
保証協会やプロパー借入(無担保)が難しい資金調達
通常、事業を行うとき自己資金が足りない場合は、金融機関からの借入を行います。
しかしながら、以下の場合はクラウドファンディングで資金調達を行うこともあります。
①保証協会付の借入枠が上限である場合や保証の要件を満たさない
②金融機関から担保無しの無担保借入が難しい
③新しい技術やサービスではなく、IPOも展望しないため、ベンチャーキャピタルが投資しづらい
主に貸付型(ソーシャルレンディング)がそれに当たります。
ただ、当然高金利で貸付型を通じて借入を行う以上はそれなりの理由があると支援者は感じますので、確り償還して返済実績を作っていくことが必要です。
ある意味「株式投資型」や「不動産投資型」も同様の部類に入ります。
〇株式投資型
EXITが未確定のため、支援者に対しては長期的に企業や事業に”共感”を持ってもらうことが必要です。
〇不動産投資型
不動産の持ち分を優先/劣後に分けますが、事業者が劣後部分の割合をどの程度に設定し、優先部分に出資する支援者に安心感を与えるのかが重要です。
まとめ
- 「購入型」や「ファンド投資型」には主に6つのメリットがある
①テストマーケティング
②ファン(顧客)作り
③プロモーション
④販路開拓
⑤生の声
⑥信用力の向上 - 「貸付型」「株式投資型」「不動産投資型」は主に資金調達目的。
返済実績や共感、劣後部分の取得により支援者が出資できる状況を作り出すことが必要です。